陶器瓦の屋根は被害が多かった
私の住まいは熊本地震で被害の最も大きかった益城町の隣にあり、益城町には友人、知人も多く、地震の後益城町を訪ねてみました。
テレビなどで報道されているのが益城町で、その被害は尋常ではありません。
熊本市から益城町の中心に通じる県道28号線で益城町に入りました。
この道路が益城町中心部のメインストリートであり、テレビなどで報道される風景もこの通り沿いです。
昔から何度も通った道ですが、あまりの景色の変わりように言葉を失ってしまいました。
道路の両脇にある建物の多くが無残にも倒壊していました。
益城町は熊本市のベッドタウンである一方、昔から農業を営まれているお宅が多く存在します。
農家のお宅は昔ながらの純和風で重厚なお宅が多いんです。
そのお宅の屋根には立派な和風の陶器瓦が乗っていました。
益城町を訪ねた際、立派な和風の陶器瓦が乗っている家が多く倒壊していることに気づきます。
陶器瓦以外のスレート屋根の家も倒壊していましたが、圧倒的に陶器瓦の家の被害が多かったようです。
真下に潰れるのではなく、斜めに倒れているお宅が多かったですね。
強い揺れで屋根の重さに建物の躯体が耐えられなかったのでしょう。
倒壊を免れたとしても、屋根瓦が落ちたり、ヒビが入ったりと陶器瓦のお宅で被害にないところは皆無のように思えました。
我が家の周辺も同様です。
私の住んでいるところは住宅地で、和風、洋風の様々なタイプの住宅があります。
近所を見渡してみると陶器瓦の屋根で被害のなかったお宅は皆無と言っていいでしょう。
スレート屋根は被害が少なかったですね。
以下の写真は2016年5月19日、地震発生から1か月以上経った私の近所の写真です。
我が家のベランダから撮った写真です。
地震発生から1か月以上経ち、屋根の修復も随分進みましたがいまだにブルーシートのかかったお宅が少なくありません。
ブルーシートのお宅はすべて陶器瓦の屋根です。
私の家の斜め前のお宅です。
地震の直前にリフォームされたばかりです。
陶器瓦の2階部分が割れてしまいました。
私の家の正面のお宅です。
地震の後一部補修はされていますが、まだ完全に修復されていません。
これらは地震から1か月以上経過した、我が家の近所の写真です。
これでも随分修復は進んでいるんです。
地震直後は、とてもひどい状況でした。
しかし、いまだにブルーシートで屋根を覆ってあるお宅はすべて陶器瓦なんです。
陶器瓦は和風の住宅にはマストアイテムであり、建築後のメンテナンス負担が少ない優れた屋根材です。
ただ、住宅の耐震という観点で見れば軽量な屋根材の方が被害が少ないように感じました。
これは今回の熊本地震で私が個人的に感じたところです。
屋根瓦の被害がもたらすもの
屋根瓦の被害は家屋に与えるダメージだけではありません。
私のお隣も屋根瓦が十数枚落ちました。
たった十数枚なんですが、落ちた瓦は庭に落下し、おじいさんが数十年も丹精に育てていた盆栽や自動車を直撃し、盆栽の多くがダメになり、自動車は屋根がへこみ、フロントガラスが割れてしまいました。
熊本地震は震度7の前震、本震共に夜間に起こったため、屋根瓦の崩落で人が亡くなったりケガをしたという話はあまり聞きません。
しかし、地震が発生する時間帯によっては、屋根瓦の崩落による人身事故が避けられません。
もちろん屋根瓦の崩落は家屋にも甚大なダメージを与えています。
雨が降れば雨水が屋内に侵入し家屋を痛めます。
応急処置としてブルーシートで覆っていますが、強風の日はブルーシートがめくれてしまい、バタバタと音をたてています。
屋根瓦ひとつにしてもこれだけ大きな影響があるんです。
屋根瓦の診断
私の家の正面の家は2件とも純和風の屋根瓦が載っています。
不思議なことにほぼ同じ位置にあるお宅なのに1軒は屋根瓦が落ち、もう1軒は全く被害がなかったのです。
被害のなかったお宅は数年前に屋根の葺き替えをされており、その時に耐震補強をされたのか地震に強い防災瓦を使われたのだと思います。
屋根瓦は高い位置にあり、素人ではとても判断が付きません。
屋根瓦の診断としては瓦の品質(劣化)を判断する側面と崩落の危険性を判断する2つの側面があります。
地震対策としては後者の崩落の危険性を判断する側面が重要です。
日本屋根診断士協会の「屋根診断士」という資格があり、その方に診断を頼むのも一つの方法ですし、屋根についてはその家を施工した業者に相談する方法がいいかと思います。
特に古い家屋は屋根瓦が重ねてあるだけというのも少なくありません。
実際、自分の周りでこれだけ屋根瓦が崩落している状況から判断して、地震対策で屋根瓦の補強が必要な家屋はかなりの数に上ると思います。
とにかく1度、専門業者による屋根瓦の診断をお勧めします。
屋根瓦の補強
屋根の改修は安いものではありません。
しかし屋根瓦の崩落は家屋に甚大なダメージを与えるだけでなく、人にも物にも被害を与える可能性があるんです。
最も簡単な耐震補強は瓦止め工事です。
瓦止め工事は「ボンド止め」や「金具止め」などの施工法があります。
「ボンド止め」や「金具止め」を単体で行う方法と、両者を併用する方法があります。
瓦止め工事は既存の瓦をそのまま活かすので、コスト的には安く済みます。
また、経年による瓦の改修や葺き替えを検討している方でしたら、そのタイミングで耐震補強を併せて検討されるといいと思います。
今回の熊本地震は震度7の前震、本震共に夜間に起こったため、屋根瓦の崩落で人が亡くなったりケガをしたという話はあまり聞きません。
しかし、地震が発生する時間帯によっては、屋根瓦の崩落でよる人身事故が避けられません。
熊本地震では多くの屋根瓦の崩落が発生しました。
屋根瓦の診断と補強は強くお勧めします。