応急危険度判定の実施

各建造物に応急危険度判定が行われる

本震の後、しばらくして周囲の建造物に「応急危険度判定」というものが行われました。

 

応急危険度判定とは

応急危険度判定は大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的とするものです。

その判定結果は建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。

また、これらの判定は建築の専門家が個々の建築物を直接見て回るため、被災建築物に対する不安を抱いている被災者の精神的安定にもつながるといわれています。

建物などに赤い「危険」、黄色の「要注意」、緑の「調査済」といったB4サイズの紙が貼られていくんです。

応急危険度判定はあくまでも地震により被災した建築物による二次的災害を防止する目的で実施されるものです。

ですから、罹災証明の為の調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではありません。

応急危険度判定は「応急危険度判定士」という資格を持った市町村の職員が行いますが、今回の熊本地震では市町村の職員だけでは手が足りず、全国の市町村の職員の方が応援に来ていました。

私の家の周りでは三重県の職員さんたちが応急危険度判定を行っていました。

赤い「危険」、黄色の「要注意」、緑の「調査済」といった紙は以下のようなものです。

これは私の近所で撮影したもので、氏名と整理番号は黒塗りしています。

ちなみに右の緑の「調査済」は我が家に貼られていたものです。

写真では見えにくいかもしれませんが、赤い「危険」の下には「この建築物に立ち入ることは危険です」、「立ち入る場合は専門家に相談し、応急措置を行った後にして下さい」と書いてあります。

それから「注記」のところに建物個別の危険箇所について記されています。

この紙は建物に限らず、今にも倒れそうなブロック塀などにも貼られています。

この赤い「危険」の紙が貼られた家屋は中に入ることが危険ですので、このお宅に住んでいる方は家で生活することが難しく、避難所や車中泊といった形で避難生活を余儀なくされています。

益城町や西原村といった被害が大きかった地域は、この赤い「危険」の紙が貼られた建築物がかなり多く、被害の大きさがよくわかります。

私の住む熊本市東区もこの赤い「危険」の紙が貼られた家屋が結構あります。

 

黄色の「要注意」の下には「この建築物に立ち入る場合は十分注意してください」、「応急的に補強する場合には専門家にご相談下さい」と書いてあります。

それから「注記」のところに建物個別の危険箇所について記されています。

この黄色の「要注意」の紙が貼られた家屋は中に入ることが制限されているわけではありませんが、家屋には多少なりとも損壊が認められ、ある程度の修繕が必要だと思われます。

この黄色の「要注意」の紙が貼られた家屋も多いですね。

私が住む地域では緑の「調査済」よりも数は多いかもしれません。

 

緑の「調査済」の下には「この建築物の被災程度は小さいと考えられます」、「建築物は使用可能です」と書いてあります。

我が家も隣の実家も幸い判定結果はこの緑の「調査済」でした。

しかし、損傷がないわけではありません。

築3年の我が家はまだしも隣の実家は築25年です。

屋根瓦は落ち、外壁や室内の壁にも無数のヒビが入っています。

それでも緑の「調査済」なんです。

信号機のイメージなら緑は安全なイメージですが、文言の通り「建築物は使用可能」に過ぎないんです。

建物を元に戻すにはそれなりの修復と費用が必要です。

応急危険度判定は建物の外観だけで判断されます。

家の中のダメージは関係ないんです。

応急危険度判定の目的は二次的災害を防止することであり、判定にはスピードが要求されます。

ですから、応急危険度判定の紙はあっという間に貼られていきました。

外観のみでの判定ですので家人に声をかけることもなく、2人組の判定員が淡々と玄関口に判定結果の紙を貼っていきます。

私の家も気付かないうちに判定結果の紙が貼られていました。

 

私の見た感じでは当たり前ですが比較的新しい家屋は外観的なダメージも少なく、緑の「調査済」が貼ってあるケースが多いようです。

築30年を超えるような家屋はさすがにダメージが大きく、赤い「危険」の紙が貼られたお宅が多いですね。

評価が分かれるのは築20年前後の家です。

1995年の阪神淡路大震災を受けて、2000年に大幅に建築基準法が改正されていますので2000年以降に建てられた築16年未満の家はダメージが少なかったのではないでしょうか。

もちろん立地条件にもよりますが、建築基準法改正前の家は建物の躯体の強さにかなりばらつきがあるように感じます。

私の隣の実家は築25年の木造で建築基準法改正前の建物になりますが、応急危険度判定は緑の「調査済」でした。

また近所のお宅も実家と同じく築25年の木造ですが、応急危険度判定は緑の「調査済」でした。

両方の家は瓦が落ちたり、外壁や家の壁にヒビが入るなどの被害はありますが、建物の躯体自体はしっかりしており、応急危険度判定は緑の「調査済」になったわけです。

両方の家に共通するのは、同じ工務店で家を建てたことです。

この工務店はもともと宮大工から始まった、仕事が丁寧で地元では評判のいい工務店なんです。

実際、両方の家と同時期もしくはそれ以降に建てられた家でも損壊の程度が大きく、黄色の「要注意」が貼られたお宅はたくさんあります。

やはり、しっかりした工務店が建てた家は、建築基準法改正前であっても構造や躯体がしっかりしているんだなと感じたものです。

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